北京で太極拳

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The Lost Thing。。。アカデミーショートアニメ受賞

第83回アカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞した"The Lost Thing"。
オーストラリアのイラストレーター、ショーン・タンの絵本が原作です。
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「忘れ物」は、
ある青年が海岸付近でビンの蓋集めをしている時に、不思議な形の生き物を発見するところから始まります。青年は誰かが置き忘れたのだろうと思い、その生き物の持ち主が誰か、そして元は何処にいたのか聞いて回りました。しかしみな無関心で。ほとんどその存在に気付いてさえいませんでした。役立つ情報は無く、周辺の人も、友人も、両親も、その生き物を煩わしく感じて受け入れてくれません。そこで青年は、安住の地を探してあげようとします。

台詞は英語。。。




原作を全訳しているサイトがあったので、、、(^^;

で、お話が聞きたい?
えっと、とっても面白い話を沢山知ってたんだけど。笑い死にしちゃう位おかしな話とか、二度と聞きたくないほど怖い話とかね。
でも全部忘れちゃってさ、思い出せないんだ。
だから、あの忘れ物を見つけた時の事を話すよ。

あれは数年前の夏だった、いつもとそんなに変わらない一日で海岸の近くにいてね。特にどうって事無い一日だったよ。僕はいつものようにビンの蓋集めに精を出していたんだけど、立ち止まって何の気無しに顔を上げたんだ。その時さ、僕があれを初めて見たのは。

しばらくあれを見ていたと思うな、だって本当に変な形をしていたから。悲しげで迷子っぽい感じだったんだ。そこにいるのに誰も気付いてなくてさ。皆砂浜で遊ぶのに忙しかったからかな。

もちろん僕は興味を持ったよ。だから調べてみる事にしたんだ。
特にどうって事もない。
ただそこに座っているだけで、
場違いな様子。
僕は困惑したよ。

でも一旦話しかけると、あいつはとてもフレンドリーだった。
午前中ずっとあいつと遊んでいた。凄く楽しかったけど何かおかしいなって気持が拭えなかったんだ。時間は過ぎていったけど、誰かがやって来てあいつを家に連れ帰る可能性はどんどん低くなってね。

これが悲しい状況なのは否定できなかった。
つまり「捨てられた」んだ。

数人に当って、あいつの事を何か知ってるかと聞いてみたんだけど、誰も余り役に立たなかった。
僕はこの忘れ物をピートの所に連れて行った。ピートは何にでも一家言ある男でさ。
「かっこいいじゃん」ピートは言った。
「持ち主を捜してるんだ」とピートに言った。
「さぁな。ずいぶん変な形してるし。誰の物でも無いかもしれん。何処からとも無く現れたとか。そういう事もあるさ……」とピートは言ってわざと一呼吸置き、大げさに「……ただ単に捨てられたんだよ」と言った。

あいつを僕の家に連れて帰るしかなかったんだ。つまり置き去りにして街中をさ迷わせるなんて出来なくて。ちょっと同情したってのもあるけど。

僕の両親は最初あいつに全然気付かなかった。最近の出来事について意見を交わすのに忙しかったからだと思うけど。

とうとう僕は二人にあいつを指差したんだ。
「足が不潔ね!」とママはかん高い声で言った。
「未知の病気を色々持っているかも知れんぞ」と注意がちにパパ。
「お前が見つけた場所に戻してきなさい」と両親は僕に言いつけた。二人とも同時に。
「捨てられてたんだ」と僕、でも二人はもう別の話をしていた。

あいつを裏の物置に隠して、食べる物を与えた、あいつの好物が分かったからね。少しうれしそうだったけど、まだ持ち主は見つからなかった。

地元の新聞を開いてペットの捜索願い広告が出てないかチェックしてみたけど、あるのは冷蔵庫の修理広告ばかりだった。たぶんピートが言った通りなのかもとその時思ったんだ、ただ捨てられただけなんだって。いずれにせよ、あいつをいつまでも物置に置いておく訳にはいかなかった。ママかパパが金槌とかを取りに来れば結局バレちゃうからね。

置いときたくても置いとけない、本当にジレンマだったよ。
だから新聞の最終ページにあった小さい広告を偶然見つけた時、どうしようか思い悩んだんだ。

突然、日々の秩序ある生活が乱されてしまった事は有りませんか?
例えば、所有者の不明な物や名前の書かれていない物、元の持ち主が分からないやっかいな工芸品
残されたままの書類棚、ただ単に誰のでも無い物などなど……

心配後無用!
何でも収納できる棚を用意してあります。
政府ガラクタ省、ダウンタウン、6328通り、高層灰色ビル357番地B

翌朝僕達は電車に乗ってダウンタウンに向った。
高層灰色ビルに僕たちは着いた。ビルには窓が一つも無く、辺りはとても暗くて消毒液の臭いがした。
「落し物を持って来たのですが」僕はフロントの受付譲に話しかけた。
「この書類に記入して下さい」と受付譲。

あいつは悲しげに小さな音を立てた。
ペンを探していると、何かがシャツの背中を引っ張った。
「その落し物の事を本当に気にかけてるなら、ここに置いて行かない方がいい」
「ここは捨てたり、忘れたり、うやむやにしたりする場所だから。さぁ、これをどうぞ」
とひそひそ声で言われた。

それは矢印が描かれた名刺でね。余り印象的な名刺じゃなかったけど、何処かを指し示しているのは間違いないようだった。
「ありがとう」と僕は言った。

そこで僕達は高層灰色ビルを後にして、
あの矢印を求めて至る所を探した。
なかなか見つからなかったし、
あの矢印がいったい何なのかも分からなかったけど。

やっと僕達は目的地らしき場所を見つけた。名も無い細道の途中にある暗くて細い隙間みたいな所だ。そんな場所があるなんて、実際に探し求めて行かない限り分かりっこないような場所さ。
壁のブザーを押すと大きな扉が開いた。

どう考えていいか分からなかったけど、あいつはうなずくような満足気な音を立てたんだ。お互いにさよならを言う一番良い時だったと思う。だから僕達はそうした。
その後僕は家に帰ってビンの蓋コレクションのジャンル分けをし始めたんだ。

まぁそんなとこ。で、お話はお終い。
特に深い話じゃないのは分かってるさ、でも、深い話だなんて言わなかっただろ。
そうそう、モラルについても僕に聞かないでよ。

だって僕だって、最後に行き着いたあそこが、あいつの本来いるべき場所じゃないと思うしね。実際あの場所にいた物達は全部、他所から来てたんだ。でも皆とても幸せそうだったから、そんな事は問題じゃなかったと思うよ。よく分からないけど……。

僕は今でも時々あいつの事を思い出すんだ。特に、視界の隅にちょっと場違いな物を見つけた時にはね。分かるだろ、なんか風変わりで、悲しそうで、迷子になった感じのやつさ。

でも最近はああいうのもだんだん見かけなくなったね。
たぶんああいう忘れ物はもうそんなに多くないんだろう。
もしくは僕が単に気付かないようにしてるだけなのかも。
他にやる事があって、色々と忙しいからね、たぶん。
by takeichi-3 | 2011-03-09 23:16 | 中国映画音楽 | Comments(0)