北京で太極拳

takeichi3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

2011新作中国映画。。。≪星空≫

今月上映となった、思春期向け映画≪星空≫
主演は、周星馳の「≪ミラクル7号≫で息子役を演じ、そのまま養子になってしまった徐嬌。
すっかり女の子らしく可愛いくなっています。




その原作となったのは、台湾のアニメ作家≪幾米=ジミー・リャオ≫の作品。。。




星空を見上げる時、世界は巨大なモノに変身する。
去年の誕生日。おじいちゃんが小象をプレゼントしてくれた。
時々、その小象は巨象に変身する。

六歳まで、私は山に住む祖父母と暮らしていた。
山の夜、星々は綺麗に輝いていた。
あの頃は、都会で暮らしている父母のことをいつも思っていた。
現在の私は、山で暮らしているおじいちゃんと天国にいるおばあちゃんのことを思っている。

いつからか、家の中は無口で静かになっていて~
私は、自分の部屋に鍵をかけて自分の世界に籠るようになっていた。

ママの仕事は忙しく、友達も多く。。。
この間、海外出張に行った時には小さな子猫をプレゼントしてくれた。
時々、その小猫は巨猫に変身した。

私はママを愛しているし、ママも私を愛している。
でも、私を理解してはくれない。私もママを理解していないと思う。
私にも数人の友達はいるけど、この漠然とした孤独感を癒してはくれない。

学校では嫌なこともあるけど、でも、それを口外したりはしない。
表面的にはクールに振舞っているけど、内心では傷ついている。
どうして素直になれないのか、自分でもよく分らない。

パパはいつも電話をしている。
そのどれもが、とても重要なことを話しているようだけど~
私はパパに対して話したいことはなかったし、パパも私とどんな話したらいいのか分らないみたい。

父母の仲は、イイ時もあるけど。。。喧嘩をしたり~口をきかなくなったり~もする。

私は、よく他人の家を覗き見している。他の人たちはどんな風に暮らしているのか。。。
最近、老婆の家に引っ越してきた人がいる。
これはイイことだと思う。一日中、テレビを見ることしかしていなかったのだから。

山で一人で暮らしているおじいちゃんは退屈かしら。でも、絵が好きだから。
「この山の星はゴッホが描いた≪星空≫と同じくらいに綺麗だ。」と言っていた。

冬になって、おじいちゃんが病気になった。
病院から電話をかけてきて、「咳が一晩中止まらないんだ。」と、、、
私は、付き添ってあげたかったけど、「よく勉強するんだよ。」と言うから、、、

クリスマスの夜にかかってきた電話が、皆を夢から呼び覚ました。
「悪い夢でありますように~」と願ったのに。

おじいちゃんの葬儀には行かなかった。
人前で涙を流すのは嫌だし、おじいちゃんだって私が悲しむ姿を見たら辛くなるだろうから。
私は一人で、自分のやり方でおじいちゃんに別れを告げたかった。

ある寒い夜、誰かの歌声で目が覚めた。
一人の見知らぬ男の子が、老婆の家の屋根に寝転んで、大雪の中で歌っていた。
彼の楽しそうな様子といったら、まるで別の星からやってきたような感じだった。

新学期が始まると、クラスに一人の転入生がやってきた。
自己紹介の時、自分の名前を言っただけで他には何も言わなかった。
彼は口数が少なくて、自分から誰かに挨拶をすることも無かった。
同級生たちは変な奴だと思っていた。
時々、誰とも話したくなることがあるある私には、何となく理解できた。

時間が経ってからも、彼は一人で、、、
隣のクラスの生徒に、彼のことを目障りな面持ちで見ている生徒がいて。。。

いつも書店の片隅で静かに本を読んでいて、外の世界のことには関心がないようだった。
どうしてかは知らないけど、私は、あちこちで彼を見かけた。彼は、私と同じように孤独に思えた。
でも、私のほうが少しはマシ。だって、私は魔法を使えるから。

雨が降っても、傘を持たない彼は一人で大雨の中を走っていた。
そんな彼を見て、何だか羨ましいような気がした。
彼はいつも他人からの助けを拒んでいた。人と離れた処に身を置くことで自在になれるかのように。

彼は、迷宮の中で、迷宮の入り口がどこにあるのかなんて気にもしないで立っている樹のようだった。
私は、籠の中の鳥のように、広い空へと飛んで行くことを願っていた。

ある日、彼が同級生たちに苛められているところに遭遇した。
こんな理不尽なことは許せない!
私たち二人とも傷ついたけど、これからは誰も彼に手出しはしてこないような気がした。

放課後、私たちは一緒に病院へ治療に出かけた。
「僕のパパは船乗りなんだ。いつも家にいなくて。長いこと会っていない。ママは、昼も夜も働いている。」

彼は、気持ちが落ち着かない時には魚と話をしているらしい。
街の魚屋の水槽の中にいる魚たちに名前をつけて、友達のように接している。

休みになると、彼は山に出かけた。
野外生活の達人だという彼は、何日も一人で過ごせるようだった。

彼の部屋の明りは、一晩中つけっぱなしで。。。
時には、暗い夜の海を照らす灯台のように、時には、人の間に落ちてきた星のように思えた。

同級生たちが私たち二人を指さすこともあったけど、構わなかった。
学校から逃げ出したいと思ったけど、でも、何処に逃げて行けばいいのか知らなかった。

どうしようもないくらいに彼の成績が落ちて~私は一生懸命手伝ったけど、役に立たなかった。
毎晩徹夜で勉強してるのに、その努力はどうなっているのか。。。

私たちは、これといった目的があるわけでもなくあちこち遊び回った。
誰かが傍にいてくれるのって~イイ感じ。

少しずつ、彼が雨に濡れるのが好きな理由が理解できるようになってきた。
自由自在になるには、背負わなければならない事柄を受け入れる必要があるんだって。

週末には、電車に乗って港へと行った。
彼はいつも望遠鏡を覗いては、遠くの輸送船を見ていた。
「あちこち引っ越してばかり~一体、どこが自分の本当の家なのか。魚のように自由自在だったら、悩みもなくなるのに。」

窓の外、花火は賑やかなのに、部屋の中は冷え切っていた。

ある日、彼のお気に入りの本が見当たらなくなって。
夜になってから、校庭の隅にある大樹の上にあるのを見つけた。
都会の空、だんだんと星が見えなくなっている。

昨晩は、ちょっとした事件があった。魚屋の水槽が割られてしまい。。。
私たちが気付いた時には、既に手遅れだった。
彼は路辺にうずくまり、真っ青な顔をして泣いていた。

父母たちのことは、もう一切知りたくもない。

「行きましょ。この都会から遠く離れた場所へ。」

おじいちゃんの家。おじいちゃんは、散歩に出かけて~直ぐにでも戻ってきそうな気配。
この窓からは、一番綺麗な夕陽が見える。
この台所からは、一番楽しい笑い声が聞こえる。
この世の中に、たった二人しか残っていなかったとしても怖くない?

おじいちゃんは、私の手を引きながらこの静寂な森を抜けていった。
森の外れには綺麗な小さな湖があって。
湖の真ん中で小舟を停めて、二人で横たわっていると波が揺りかごのように小舟を揺らした。
濃い霧が晴れるのを待っていると、綺麗な星空が見えてきた。

家に帰ってから、私は大病を罹ってしまい~
その混沌とした日々の中、ずっ~と、ゆっくりと大海へと泳ぎ出して行くクジラの夢を見ていた。

登校して、ようやく、彼が転校して行ったことを知った。
老婆が言うには、彼のパパの船が南方の港に着いて、今度は彼らを一緒に連れて行くって~
不思議な微笑みを浮かべながら、老婆は、彼の部屋を是非見て行くようにと。。。

あ。。。そうか。彼は、魔法使いになれたんだ。

春の朝。
誰が連れて来たのか分らないけど、玄関の前で一匹の子犬がワン、ワンと吠えていた。
この時の小犬は、巨犬に変身することはなかった。

あれからは、一度も彼には会っていない。
けれど、私は、あの夏の日を忘れない。一番輝いていて、一番寂しかった星空を。

f0007580_12385491.jpg

by takeichi-3 | 2011-11-06 23:56 | 中国映画音楽 | Comments(0)