≪松=放松≫は、太極拳で最も重要な要素。松は、どのように実現するのでしょうか?
ただただ力を抜く~ではダメです。
例えば、各関節の位置(外三合)がズレていると松下(松が出来た~その効果によって自然に緩みが生じて下に沈む)が出来ない。
先ず、形を整える⇒自然に松が生じる⇒正確な動作が重要。
どれ位、松する?
バランスが大切です。松し過ぎるのもダメ。松は協調一致運動の為に働いています⇒松であればあるほど良い~は、間違いです⇒萎えてしまう⇒「失われる」という表現をします。
松は、太極拳を練習する道具の一つであって目的ではありません。
松状態での練習という手段を通して、より多くの筋肉を効率的に使えるようにしています⇒最終目的は全身の≪静≫と≪内外成為一家≫
「松者蓬松也寛而不緊也~~~~~」
呉図南が≪松功論≫で著している言葉。
太極拳の≪松≫は周(全)身内外が松している状態⇒一か所たりとも固く緊張している部分が無い⇒松であっても散(集中がない)ではない、松であっても乱れがない⇒松の中には研ぎ澄まされた精神があり、相連(連環=節節貫穿=協調一致)がある⇒松は太極拳の拳魂。
人体は、松という状態下で、腰、股を自由自在闊達に動かすことが出来る。
全ての関節が滞ることなく生き生きと動く⇒筋肉、関節が順(規律に随って、自然)に動く⇒経絡の通りを良くする~意識も途切れることなく通すことが出来る⇒劲を正しく通す(目的地まで到達させる)ことが出来る。
虚領頂劲⇒虚領とは何を指しているか?⇒首の後ろ(うなじ)⇒頂劲とは何?⇒頭頂の百会⇒百会、もしくは頭頂。それを軽く上に持ち上げるような感覚。
持ち上げる感覚は、どのような条件の下で生じるのか⇒虚領(首の力を抜く)~首に力を入れて引き上げているわけではありません~頂劲=自然に頭が上に向かっている状態。
この二つの動作の順番⇒先ず、首を放松させると~頂劲となる。
正しく行われると、自分自身の内側に上下に引っ張りあう感覚が生じる⇒虚領となるにつれて下方向に沈んでいく感覚が生じる⇒頸椎の一つ一つの間隔が開いて(緩んで)落ちていく⇒放松へと導かれる。
下顎は軽く収めて、目はまっ直ぐ前を見る⇒これらも虚領頂劲になるための重要な要素です。
含胸抜背はどのように理解したらよいのでしょうか?
含胸抜背の目的は?
太極拳理論要求の中、≪胸寛≫⇒含胸=寛胸という身体動作を通して横隔膜を下に下げる⇒肺の呼吸量を増強⇒含胸抜背は武術的要素意外に、呼吸器系統を良くすることが可能。
太極拳の中で、体を回す⇒腰と股が主。
松股⇒膝関節が放松、足首もまた放松。
爪先を開く時、60度を超えないように=超えると足首関節が緊張~膝関節も影響されて緊張(伸びてしまう)~膝関節が緊張~股関節も緊張⇒角度が適切であれば、緊張しない⇒自然に重心が下沈⇒重心が後ろ脚に乗る⇒臀部と後ろ足が垂直線上にあれば、自然な弾性(蹴り出す力)が生じる。
松腰、松股が出来る。
動作の過程において、肘関節は終始地面に対して適切な角度(弧)を保持している=肩関節は松開して沈んでいる⇒松の目的は身体を引き延ばす(関節を開く)⇒より遠くを攻撃できる。
太極拳の要求は全身松放。
虚領頂劲、沈肩墜肘、松腰松股は、松となる為に必要な基本的要求です。そして、永遠に追及していかなければならない課題でもあります。
ユックリとした練習を積み重ねるうちに体感出来るようになります⇒たゆまぬ練習によって、全身、各関節が連環(貫穿)し、意識の伝達がスムーズになり身体のあらゆる部分を敏捷に動かすことが可能になります⇒各関節をコントロールして四方八方に自由自在に動くことが可能になります⇒いつでも発力~関節から関節へと力が貫かれる⇒最速で、全身の力を収集して力点へと到達⇒目にも留まらぬ速さ~稲妻は、その音よりも早い。
松によって、快速が可能になる。緩によって、内劲が増長する。
力を使わず、自然の沈みを利用。
太極拳は、快(早い)と慢(ゆっくり)という反対の性格を併せ持つ運動(直:攻撃は快、円:防御変化は慢緩)⇒独特な攻撃理念。
武禹襄の太極拳論の初めの言葉⇒「一挙動周身備要軽灵、尤須貫串=一動無有不動、一静無有不静」
太極拳練習では、まず、形の正確さを求めなければなりません。
正しい形になると、内側から自然に内劲が表れてきます。
練拳方法は、多くの型を覚えれば良いというものではありません。では、どのような練習が良いのでしょうか?
簡単に言うと、太極拳の運動体系(理論)を基礎とした練習を積み重ねて誤差を少なくしていく⇒誤差が一定のレベルになる⇒動作と内面が協調一致=拙力を使わなくなる⇒勢いが生まれる。
拳論⇒端正を基本とすれば全身に自然の力が生まれてくる。
立身中正⇒偏りがない⇒支撑八面となる⇒「静如山岳、動若江河」
≪太極拳十三行歌≫の中に、立身中正は転換を易くすると書いてあります。
人は立体⇒立身=中軸線。上下が正しい垂直線⇒転換が自在になる。
立身中正=バランス力の元。
推手において、自身が立身中正であることによって相手の力を判断することが出来る。
手眼身法歩の中で、身法は中枢となっている。
陳長興は太極拳十大要論の中で、
「上欲動而下自随之、下欲動而上自領之、上下動而中部応之、中部動而上下和之、手動腰動、足動、眼神亦随之動」⇒(太極拳運動の特徴である「周身=整体」、「上下相随」、「協調一致」を説明。これらが出来るに従って太極拳のレベルも上がってくる)
手、肘、肩、胸、腹、、、下肢は股、膝、足首、足。
上下が相随=丹田を核心とした~一動全動、節節貫穿が出来る。
相随⇒まず、形が定まる⇒丹田に核心が形成⇒動く時は、丹田が核心⇒上下が一緒に動き出す原動核⇒丹田が動く~手が動く~脚が動く~足首が動く⇒どこもかしこも動く。