ここ最近の深層筋(横隔膜)稼働について、詳細に記している東洋経済サイト記載の腹圧関係の記事を丸ごとコピーしてしまいました~太極拳の健康効果や身体の機能を高める効果の手掛かりになるかと。(^^)v
スタンフォード大学の水泳チームに、オリンピックと世界水泳合わせて19の金メダルを獲得したケイティ・レデッキー選手がいます。そんな彼女を、今年の全米大学選手権・400ヤード個人メドレーで破ったのが、同じくスタンフォードのエラ・イースティン選手。彼女ほど疲労とケガの予防に時間と努力を費やした選手はいません。イースティン選手がとったのは、「ダメージが溜まりにくい体にして、最初から疲れないように予防しておく」というアプローチ。「体内の圧力を高める」ことで疲労の予防を実現しました。
「体内の圧力」とは「お腹の内部の圧力」のことで、「腹圧」とも呼ばれます。腹部には肝臓や胃腸などの内臓を格納する空間「腹腔」があり、この腹腔内部の圧力が「体内圧力」の正体です(以後、腹圧と表記)。腹腔の上には「横隔膜」、そして横隔膜の上には「肺」があります。空気を吸って肺を膨らませることで横隔膜が下に押され、その横隔膜が上から腹腔を押す形で腹腔が圧縮されると、腹腔内の圧力が高まり外側に力が働きます。これが、「腹圧が高まる仕組み」です。「横隔膜によって腹腔が圧縮され、腹圧が高まる」と、お腹は膨らんで腹囲が固くなるのが特徴です。
腹圧が弱まると、体は途端に疲れやすくなります。そして、疲れに悩む人の多くは、「腹圧が十分高まっていない」ように思います。体の構造上、腹圧が弱まると、体の中心である「脊柱」と「体幹」が支えられず、体は安定しません。脊柱には脳からの指令を体の各部に伝える中枢神経の束が通っています。なので、体が歪むと体の各部と中枢神経の連携が乱れ、結果、思ったとおりに体が動かず、余分な負荷が体にかかってしまうのです。
体が歪んで姿勢が悪くなり、それが定着してしまうと「肩をかばって腰の筋肉を使う」といった具合に、ちょっとした動きにも、つねに余計な負荷がかかるようになる――これが慢性化して、限られたエネルギーを無駄に消耗してしまう「疲れやすい体」ができあがる、というわけです。この現象は往々にして無自覚に起きていますが、姿勢が悪い人、とくに胸呼吸の人(呼吸が浅い人)は要注意です。胸呼吸だと横隔膜を十分下げられず、腹圧を高めることが難しいためです。
なにかとストレスが溜まりやすい現代社会、胸で浅く呼吸している人はとてもたくさんいます。浅い呼吸だと、横隔膜を十分に動かすことができません。横隔膜には自律神経が集中しているので、自律神経の動きも鈍くなり、たとえば夜になっても副交感神経が優位にならず「休息の質」が悪くなります。するとまたストレスが溜まりやすくなるという悪循環に。また、「しっかり呼吸して」というと、腹式呼吸のように吐くときにお腹をへこませる人が大勢います。しかしこれでは腹圧は高まりません。お腹をへこませるというのは、体の筋肉を収縮させる「体を“コルセット”にする」ような動きです。動いているときの安定性には欠け、この状態で体を動かすとケガや疲労につながりやすくなります。
脊柱と体幹をよりしっかり支えるためにも、アスリートに限らず、息を吐くときもお腹を膨らませた状態をキープできればベスト。この「息を吸うときも吐くときもお腹を膨らませる」呼吸こそ、われわれがスタンフォードで行う「腹圧呼吸(または英語の頭文字をとってIAP呼吸)」と呼ぶ疲労予防メソッドです。
「腹圧」の重要性を最初に唱えたのは、チェコにあるプラグスクールと呼ばれる機関で、20世紀にリハビリの重要性を唱えた神経学者や医師が創設した伝統あるスポーツ医学専門機関。「腹圧」はチェコの理学療法士パベル・コラー博士が提唱する「DNS(動的神経筋安定化)」という“筋肉より神経に着目した身体機能理論”の中でもっとも重視されているものになります。なぜなら、人はみな、赤ん坊のときに「お腹の圧力を保ったまま呼吸」していたから。乳児期、腹圧呼吸をすることで体は徐々に安定しはじめ、首が据わり、寝返りが打てるようになります。そして、やがて赤ちゃんは立てるように。これこそまさに、「体の中心が安定し、スムーズに中枢神経と体の各部が連携する、万人に共通する最適で効率のいい体の使い方」にほかならない、というわけです。